2024年06月23日

【インタビュー田原町11】『地震と虐殺 1923-2024』(中央公論新社)を書かれたノンフィクションライターの安田浩一さんをゲストに、“取材し、書くということ”についてお聞きします。

昨春から始めた、ノンフィクションの書き手に話をきく「インタビュー田原町」も次回で11回目。今回のゲストは、『ネットと愛国』『団地と移民』『戦争とバスタオル』など、足と時間をかけたルポルタージュを書き続けている安田浩一さんです。

『地震と虐殺 1923-2024』は、関東大震災直後に起きた「朝鮮人虐殺」の現場を取材したノンフィクション。映画『福田村事件』(森達也監督)で広く知られるようになった事件の背景も詳しく取材している。
なぜ、ふだん普通の暮らしをしていた村人たちが「自警団」を組み、デマに煽られ、「朝鮮人」だという理由で捕らえた人たち(なかには地方出身の日本人、社会主義者、中国人も)を集団リンチの上、虐殺していったのか。
四国から千葉まで薬の行商にやって来ていた人たちを、言葉のなまりから「朝鮮人」だとし、子供も含めて虐殺した「福田村事件」をはじめ、東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、福島、新潟、香川、大阪、韓国……と事件に関わる場所を訪ね歩き、なぜ関東大震災直後に「朝鮮人虐殺」が多発したのか。事件を引き起こしたデマの流布。軍や警察の関与、虐殺犯たちの裁判記録を掘り起こし、口を閉ざしてきた証言者の声に耳を傾ける中から、「朝鮮人虐殺」がなぜ起きたのかを考え、現代に問うていく。

安田浩一のルポルタージュの特色は、事件のあった場所に足を運ぶのはもちろんのこと。「えっ、こんなところから…」と、一見テーマから離れているかに思える周縁から徐々に中心へと迫っていく。読む側をその場に引き寄せていくアプローチにある。
たとえば、虐殺の記録に頻々と記される「鳶口」とは、どんな形状で本来は何に使われるものなのか?
ホームセンターに行き、店員からこれでしょうか?と異なるものを示される。ここでのやりとりは、なんともノホホンとしコミカルでもある。ともすれば知らないのに知ったつもりにしてきたものを、安田はきちんとイチから調べる中で、こんなものが虐殺の現場で使用されていたのかと驚き慄きもする。

あるいは、荒川の河川敷を取材する中で、描き出される「京成線」という唄。
ネットで検索して覗いた動画の女性の歌声は軽やかに聴こえる。が、荒川の鉄橋下、歌のこの地でかつて虐殺があったことを知らされる。
「これは、私にとってのアリラン」というシンガーソングライターにして在日コリアン二世、李政美(イ・ヂョンミ)への聞き取りは、虐殺があった土地に暮らし続けることの意味、痛みを考えさせる。

ときに、デマ情報を発信した無線塔のあった場所を歩き回るも見つけられず、たまたま見かけた古びた商店に入る。店番の老女と話しするうち安田は、レジ横に貼ってあった夏休みの宿題レポートが目にとまり、これをきっかけにこの地に長く埋もれていた虐殺の証言を掘り起こしていく。
まだ駆け出しの頃、安田は手伝いをしていた佐野眞一から、足を棒にしても成果が得られなかったときに、さらにもう数件訪ねようと言われる。「取材の神様がいる」からと言われた教えがいまもいきつづけているのだろう。

『福田村事件』の映画の中で印象深いのが、行商団が出会う「朝鮮飴」。そこで売られていた飴はどんなものなのかを調べる中で、「不逞」のイメージとはかけ離れた、「朝鮮人」というだけで斬殺された、素朴にして実直な青年にまつわる証言をわたしたちは目にする。
はたまた、ふだん足を向けることのない老舗料理店に出かけ、まず看板の鰻を食すところから始まる食レポならぬ、「一日裁判」の秘話。当時、店は臨時の裁判所取調室として借り上げられていたという。如何に虐殺犯たちの取り調べが甘くずさんであったのか。呆気にとらわれる。
圧巻なのは、これまで公的機関には「ない」とされてきた、あの日目にした出来事を記した子供たちの文集をひもといていく場面だ。
総頁600。大著ながらも、足で集めた「証言」に引き込まれていく。本書はもちろん過去作をもとにテキストに、「取材する」とはどういうことなのかを聞いていきたい。

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 概 要

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日 時:2024年6月30日(日)18:30開場/19:00開演
    当日、開演直前にzoomのURLをメールまたはPeatix DMにてお送りいたします。
    1週間のアーカイブ配信あり。開催日の翌日以降、準備でき次第メールにてアーカイブ視聴URLをお送りします。

会 場:Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京都台東区寿2-4-7/東京メトロ銀座線「田原町」徒歩2分)

参加費:1,500円(会場、オンラインとも)
※リピーター参加券(インタビュー田原町に会場参加したことがあるひと)/1200円
※応援してやるぞ!!(カンパ込み)参加券/2000円

ご参加をご希望の方は【インタビュー田原町11】『地震と虐殺 1923-2024』(中央公論新社)を書かれたノンフィクションライターの安田浩一さんをゲストに、“取材し、書くということ”についてお聞きします。 | Peatixよりお願いします。

※会場で開催し、オンラインでの同時配信を予定しています。ただし、状況により登壇者の移動に困難が生じた場合などは、延期、オンラインのみでの開催となる可能性もございます。あらかじめご了承ください。

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 登壇者プロフィール

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話し手

安田浩一(やすだ・こういち)

1964年静岡県生まれ。ノンフィクションライター。週刊誌記者を経て2001年よりフリーに。事件、労働、差別問題を中心に取材・執筆活動を続ける。
12年、『ネットと愛国』(講談社+α文庫)で第34回講談社ノンフィクション賞受賞。15年、「ルポ 外国人『隷属』労働者」(「G2」vol.17)で、第46回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞。著書に『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)、『団地と移民』(KADOKAWA)、『戦争とバスタオル』(金井真紀と共著、亜紀書房)ほか多数。

聞き手

朝山実(あさやま・じつ)

1956年兵庫県生まれ。書店員などを経て1991年からフリーランスのライター&編集者。
人物ルポを中心に今年5月に休刊した「週刊朝日」で30年間「週刊図書館」の著者インタビューに携わってきた。著書に『父の戒名をつけてみました』『お弔いの現場人 ルポ葬儀とその周辺を見にいく』(中央公論新社)、『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店)、『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP)など。
編集本に『「私のはなし 部落のはなし」の話』(満若勇咲著・中央公論新社)、『きみが死んだあとで』(代島治彦著・晶文社)などがある。

__________________________________ 配信について

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オンライン配信は、ZOOMを利用しておこないます。
Zoomアプリをインストールしインターネットに接続したPC、スマホ、タブレットなどをご用意ください。
当日、開演前にPeatixのDMおよび、お申し込みの際にご入力いただいたメールアドレスへミーティングルームへの招待URL、パスワードなどをお送りしますので、そちらからご参加ください。

なお、機材トラブル等で開始時間が遅れることがございます。また配信が不可能な状態になった場合は、終了後に録画を共有する形で対応させていただきます。あらかじめご了承のうえお申し込みください。

2024.06.23. | Posted in news