【終了しました】【インタビュー田原町17】野口理恵さんにきく

10/4(土)、中止した「インタビュー田原町17 野口理恵さんにきく」を行います。
6月に予定していた、ノンフィクションの書き手に「取材すること、書くこと」についてきく「インタビュー田原町」シリーズ17回めを急遽中止し、すみませんでした。
ご参観の予約をしていただいた方々、ゲストの野口理恵さん、Readin’Writin’ BOOK STOREさんにはご心配、ご迷惑をおかけしましたが、仕切り直し、あらためて実施いたします。
※中止させてもらったのは企画・聞き手の朝山実の緊急入院によるもので、実はこんなことがありましたということをnote(https://note.com/preview/n52de5c4d6ac6?prev_access_key=dba4db84cf16f353bfacec08053eedd7)
に書きましたので、ご関心があれば覗いてください。
10/4(土)「インタビュー田原町」17人めのゲストは、『生きる力が湧いていくる』(百万年書房)を書かれた野口理恵さんです。

「インタビュー田原町17」のゲストは、『生きる力が湧いてくる』(百万年書房)を出された、野口理恵さんです。
文芸誌「USO」編集長でもある野口さんは15歳のときに母親を、その後に父と兄を思わぬかたちでなくされた体験を文章にされています。
面白いなぁと思ったのは、野口さんの昔の職場の先輩編集者の北尾修一さん(現在は百万年書房代表)に自身の生い立ちを吐き出した際、「それホラーだよ」「最高に面白いな」と笑って受け止められ、盛大に泣き、すこし身軽になったと綴られていること。読みながら浮かんだのは、白夜書房におられた末井昭さんでした。
末井さんは上京して出来た唯一の友人に、子供の頃に母親が近所の青年とダイナマイト心中したことをボソボソっと話したところ、「すごいよ」と感動?され、ポジティブなほうに目線が変わったという。シンコクな体験を聞かされると誰しもハレモノにさわるように身構えてしまいがちだけど、友人の思わぬ言葉に自己肯定されたようだったという末井さんの話を思い出しました。
『生きる力が湧いてくる』は、「私」視点の話が中心で、重たいんだけれど、不思議と笑ってしまったりする。でもって油断し、わかったフリをしそうになると、ネコパンチのような言葉が飛んでくる。
この本が独特なのは同じ一冊の中に、「私」視点の話(ノンフィクション)と、「私」を知るひとたちが見た「私」の物語(フィクション)が混在していることです。
両親の死後、実家でひきこもり生活をつづけていた兄や、昔の職場の同僚や、親戚の叔母さん、疎遠のままのひとたち…。
とくに、「ぼく」(作者の兄)の視点で書かれた「uso かわいいあの子」の一編です。
妹がかけてきた「離婚するかもしれない」という電話を切ったあと、「そうか、あの子には、もう会えないのか」。しばらく、4歳になる甥(妹の子)のことを思い浮かべる。短い描写がとてもいいんですね。
「ぼく」の一視点で、39年間の人生で、彼が最後に目にしたであろう場面で終える。
野口さんのことは本で初めて知りましたし、もちろん彼のことは何も知らないけれど、物静かな笑みを浮かべる39歳の姿を想像しました。
これまで「インタビュー田原町」にゲストで来ていただいたノンフィクションの書き手の多くに共通していたのは、「私」を主語としつつ、被写体のことを細かに綴りながらも、「私」について書くことをセーブする。
例外は『芝浦屠場千夜一夜』の山脇史子さんと、『死なれちゃったあとで』の前田隆弘さんで。お二人とも、会えなくなったひとのことを書き残そうとし、それには「私」について書くことは避けられず断片的に書きはじめた点が似ておられました。
これまで「インタビュー田原町」では、書き手の「私」の扱いについて聞いてきました。何度か参観していただいているひとは「ああ、またやっているわ」でしょうが。
野口さんの、他者の眼差しを借りながら「私」を語る文章(フィクション)に接していると、ノンフィクションとフィクションの境目って何だろうと考え、なんだかいろいろ聞いてみたくなりました。
と、また訳の分かんないことを言っているようですが、オーソドックスに『生きる力が湧いてくる』が出来るまでも話してもらおうと思います。
というようなことを6月のイベントに向けて発信していましたが、夏に二度の入院生活を経て、あらためて再読し、すこし書き足したくなりました。
入院中は検診・採血など規則正しい時間以外は、ぼおっとしていることが多く、何冊か本を持ち込んではみたものの、で。相部屋の患者さんと看護士さんの話し声に「何の病気で入院されているやろう?」と想像。退院の朝まで点滴の管をしていることもあり行動範囲も限られ、ぼうっとした頭で、本を開いちゃ「書くこと」の意味を考えたりしていました。
野口さんの『生きる力が湧いてくる』で、あらためて面白いなあと思ったのは、「四人家族」だったけど、ひとりになってしまった野口さん身の上を綴ったエッセイが「読み物」として読めたこと。
先の案内にも書いたことですが、とても印象深いのは「ぼく」という主語で書かれた兄のモノローグの文章です。書き手は野口さんなので、兄に成り代わりということでしょうけど、文章、文体から「ぼく」の姿が見えてくる。立体的に。
両親がなくなったあと、実家でひとり、ひきこもりのような生活をしていた「ぼく」。子供の頃からスポーツも人づきあいも苦手で(たとえば「家族」についての章で、父親が肝硬変で亡くなった早朝、妹に「朝、四時、死亡」とだけ言うと電話を切ったという描写がある)、おそらく友達と呼べるひとがいなかった。その彼が、たまに会う小さな甥っ子と公園で過ごす時間を愉しみとしていた。
〈靴が土で汚れる。甥と一緒にしゃがみこんでテントウムシを見ていたら、膝にも土がべったりとついてしまった。手についた泥を甥とふたりで水道の水で洗い流す。水が冷たくて気持ちいい。タオルがないからズボンで手を拭く。甥も真似してぼくのズボンで手を拭く。(後略)〉(「USO かわいいあの子」より)
兄視点のモノローグには、妹からの電話で、もうそういう機会がなくなったと知らされたときの心境が綴られていて、会ったこともないのに親近感を抱きました。
この書き手は、なんでこんなふうに兄の目線になれるのか。
水彩画のような、公園の洗い場の場面。甥の母親である「妹」は、ふたりが水道で泥を流すのを見ていたのでしよう。
家族やからとか、観察癖があるのだろうとか、小説家はみんなそういうことをしているとか言われたら、まあそうなんでしょうが。
この一文の中の「ぼく」は生き生きと、生きているんですよね。自分のダメさ加減を自覚。もう彼しか住むものがなくなった実家の階段で、人生を閉じようとするその寸前まで。
かなしい話でもあるんだけど、不思議と寂しい話ではない。入院中、見ず知らずの「ぼく」のことを考えたりしました。
わたしはモノローグの文章(聞き手の気配が伝わる)が好みのこともあり、元同僚などが「Nさん(野口さんとおもわれる)」について回想、それも辛辣な言い様から、話しているその人物の表情が見えてくるのも面白かったです。
ひとはなぜ、ひとのことを書くのだろうか。
「私」が主語のときにはさして気づかなかったりしますが、自分ではない「私」について他者が語る一連の読み物は、その他者(同僚なり、同級生なり、親戚なり)のことを見ていないと書けないもので。野口さんの「うそ(フィクション)」を書く描線は面白いんですね。
いつもながら「もう何言ってんのかわかんないよ」という人もいらっしゃるでしょう、今回そのあたりの話を聞けたらと思っています。
あと、野口さんのことを知るきっかけとなった『私が私らしく死ぬために エッセイと実用・自分のお葬式ハンドブック』というZINについても。
葬儀のガイドブックであるとともに、家族を見送った「私」の濃い体験が挟まれた読み物です。たとえば、父の納骨の日に親戚一同が集まり、十代の兄妹に対して「君たちは使わないよね?」とロレックスなどの金品を持ち去っていく場面。あまりのことに何も言えずにいた、腹立ち。ガイドブックからはみ出るリアルを感じました。
いつもどおり客席からの質問タイムも設けます。
ぜひ、来てください。

新書版サイズで、装幀がオシャレ。当日販売もあります。
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概 要
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日 時:2025年10月4日(土)18:30開場/19:00開演(質問タイムあります)
会 場:Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京都台東区寿2-4-7/東京メトロ銀座線「田原町」徒歩2分)
ご参加をご希望の方は【インタビュー田原町17】野口理恵さんにきく | Peatixよりお願いします。
参加費:
〇会場参加券(通常)/1500円
〇リピーター参加券(インタビュー田原町に会場参加したことがあるひと)/1200円
〇応援してやるぞ!!(カンパ込み)参加券/2000円
※オンライン配信はございません。
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登壇者プロフィール
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ゲスト
野口理恵(のぐち·りえ)さん
1981年埼玉県熊谷市生まれ。文芸誌「USO」編集長。いくつかの出版社を経て、出版社「rn press」を設立。書籍の編集制作する傍らで、ライター活動も行う。著書に『エッセイと実用・自分のお葬式ガイドブック 私が私らしく死ぬために』(rn press)。趣味「墓」調べ。終活ライフケアプランナーの資格をもつ。健康体。
聞き手
朝山実(あさやま・じつ)
1956年兵庫県生まれ。書店員などを経てフリーランスのライター&編集者。著書に『父の戒名をつけてみました』(中央公論新社)、『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店)、『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP)など。
編集本に『「私のはなし 部落のはなし」の話』(満若勇咲著・中央公論新社)、『きみが死んだあとで』(代島治彦著・晶文社)など。ほぼほぼ余生。
