2025年12月24日

【インタビュー田原町 番外編】『ジュンについて』の田野隆太郎監督にきく

※オンライン配信はございません。

「インタビュー田原町・番外編 『ジュンについて』の田野隆太郎監督にきく」を行います。
 
ノンフィクションの書き手に「取材して書くこと」について聞いてきた「インタビュー田原町」の2026年・番外編ゲストは、映画『ジュンについて』の監督・田野隆太郎さんです。
 
映画『ジュンについて』は、東京・吉祥寺で「夏葉社」を営む島田潤一郎さんの仕事を、580日間(2021年9月~23年5月)にわたり撮り重ねたドキュメンタリー作品で、神保町に誕生したミニシアター「シネマリス」(https://cinemalice.theater/)で上映中です。

映画『ジュンについて』(https://9minpic.com/aboutjun/


出版不況がいわれる中、2009年に「夏葉社」を創業、ひとり出版社の先駆者と知られる島田潤一郎さんはどのようにして一冊一冊の本をつくり、送り出してきたのか。
書店をまわり営業する姿や、学校に行けない子どもたちの居場所をつくろうとする山間の書店を訪れて作っていった『本屋で待つ』の様子などを記録している。

映画は冒頭、取り次ぎから返品されてきた段ボールを開け、島田さんがカバーを付け替えるところを映す。傷み具合を見る。何冊かは破棄するか知り合いにあげるという。残念な思いが口数少ない中に伝わってくる。後の別の場面では、消しゴムをかけている。
なぜ、倉庫を借りず、本と段ボールの山に埋もれているのだろう?
撮影者の問いに島田さんは穏やかに答えている。
『ジュンについて』がドキュメンタリー映画として独特なのは、1年半をかけて撮影しながら、監督がインタビューする場面がほぼないことだ。
それは決してマイナスではない。心地のよいリズムで編集されていて、代わりに書店のイベントで島田さんが話す場面など、もう少し聞きたいというところでカットアウトしてゆく。もうちょっと、というのが絶妙で、書店営業での雑談も飽きさせない。2時間を長く感じさせない。
そして、意外にも監督が正対してインタビューする場面が、ない。ところどころで仕事に関する質問はするけれど、大きく語る、ようなことを主人公に求めない。移動中の車内でカメラを向けて話を聞くという場面もない。型に収めるということをせず、あるがままを捉えようとしている。シネマリスでの上映記念のトークで島田さんが「いっぱい撮られていて、ここを使うだろうと思ったものが入ってない。どういう映画になるのかさっぱりわからなかった」と話していたのが面白かった。

もうひとつ、ドキュメンタリーの撮り手として異色なことはアップの力だ。
インタビューしなかったのが気弱なわけではないことはもちろん。後半、カメラは対談中の島田さんの顔によっていく。グイグイ。面長の顔が画角に収まらず、口もとにより過ぎ目が切れたりする。顔を見せたいというよりも、島田さんが発する「言葉」「はなし」を見せたいのだろう。

なかでも印象に残るのは、島田さんが『本屋で待つ』の舞台である、広島の郊外型書店、ウィー東城店を訪れるところ。書店に化粧品売り場、エステ、コインランドリー、ベーカリーが併設している。ムラの人たちの要望にそった結果だという。きびきびと働く二人の若者がいる。本の中では、学校に行けなかったときのことが綴られている。変わった本のタイトルだが、映画を観ることで、本に込めた意図が映画では立体化されている。
居合わせた、イラストレーターのひうち棚さんにもカメラが寄っていく。本の挿絵を依頼され、はるばる遠方から現場を見に来ていた。『本屋で待つ』に出てくる仕事中の若者らのイラストが実物そっくりなことに感心した。お客さんとのやりとりなど本屋さんの「労働」「生活」「日常」が垣間見える。
 
とくに何かが起きるわけでもない。静かにして力のあるドキュメンタリー作品で、心地よい。監督の田野さんがさらに変わっているのは、撮影・編集のほかにも配給宣伝・プロデューサーと一人5役の「ひとり映画社」をやろうしているところ。通常、配給は配給会社に頼むものだが、島田さんを見ていて決めたそうだ。
島田さんの故郷の高知から始め、姫路、神戸、岐阜を辿り(劇場ではない文学館で夏葉社の本の展示なども行いながら)、12月に神保町にオープンしたミニシアター「シネマリス」で東京での初上映にこぎつけた。フォークシンガーやロックバンドがライブハウスを回るような土の臭いが漂う。
上映後には毎回、時間を設けて観客の声を聴こうとしているというのも、読者の顔を思い描きながら営業に回っている夏葉社と重なるところがある。
今後全国各地で上映を続けていくそうですが、この機会に一度、田野さんがなんでまた既存のルートを頼らない上映方法を選んだのか、そもそもなぜ夏葉社だったのか。田野さんにいろいろ聞いてみたいと思っています。

ああ、そうそう。わたしが最初に惹かれた理由のひとつに、田野さんが昔、阪本順治監督の現場にいた。それも助監督とかカメラマンとかではなく、制作にかかわる裏方にいたというのがあります(『魂萌え!』のときとか話さずとも会っていたかもしれない)。主人公の「ジュン」の話はもちろんですが、「リュウ」の歩みも聞けたらと。

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 概 要

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日 時:2026年1月11日(日)18:30開場/19:00開演(『ジュンについて』パンフの販売もあります)

会 場:Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京都台東区寿2-4-7/東京メトロ銀座線「田原町」徒歩2分)

参加費:
〇会場参加券(通常)/1500円
〇リピーター参加券(インタビュー田原町に会場参加したことがあるひと)/1200円
〇応援してやるぞ!!(カンパ込み)参加券/2000円

ご参加をご希望の方は【インタビュー田原町 番外編】『ジュンについて』の田野隆太郎監督にきく | Peatixよりお願いします。


※オンライン配信はございません。

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 登壇者プロフィール

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ゲスト

田野隆太郎(たの・りゅうたろう)

1970年、岡山県倉敷市生まれ。多摩美術大学在学中に16mm映画を制作。卒業後、阪本順治監督作品に制作スタッフとして参加。独立後、テレビ、企業広告などの演出。教科書関連の執筆をしながら、オリジナル企画によるDVDや書籍を発表。2021年『子どもたちの夏 チェルノブイリと福島』を監督。最新作『ジュンについて』。

聞き手

朝山実(あさやま・じつ)

1956年兵庫県生まれ。書店員などを経てフリーランスのライター&編集者。著書に『父の戒名をつけてみました』(中央公論新社)、『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店)、『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP)など。
編集本に『「私のはなし 部落のはなし」の話』(満若勇咲著・中央公論新社)、『きみが死んだあとで』(代島治彦著・晶文社)などがある。

2025.12.24. | Posted in news