2024年03月30日

【インタビュー田原町09】ゲストは、『死なれちゃったあとで』(中央公論新社)を書かれた、ライターの前田隆弘さんです。

※オンライン配信はありません。

4/27(土)
浅草の独立系書店・Readin’Writin’ BOOK STORE(銀座線田原町駅下車3分)にて、
ノンフィクションの書き手にきくシリーズ「インタビュー田原町09」を行います。
ゲストは、『死なれちゃったあとで』(中央公論新社)を書かれた、ライターの前田隆弘さんです。
日時:2024年4月27日(土)18:30開場/19:00開演




まず私事で恐縮ですが、東北の震災があった年に父の戒名を自作してから(仏教徒でもないのに)もやっとするものがあり、死や弔いのことを書いた本をよく手にするようになりました。ちなみに関西に暮らしていた父の死因は老衰です。


前田隆弘さんの『死なれちゃったあとで』は私家版のときに読み、どこかの出版社から本にならんかなあとおもっていました。
・自死した大学の後輩のお葬式。
・場違いにも息子のTシャツを借りたまま海水浴で溺死した父親。
・子供の頃にたまたま遭遇した不条理すぎる事故現場。
・上京のきっかけを与えてくれたひとの消息不明。
・イベントで歓談した翌日に事故死したひと。
などなど、『死なれちゃったあとで』は、読者にとってはまったく知らない、なくなられたひとのことが詳しく書かれていて、それでいながらひとりひとりの面影が浮かび、もう全員について紹介したくなるくらいディテールが深く読みごたえがある。しかも曇天の空気(ひとがなくなるわけですから)をもちながら何とも言えない不思議なおかしみが入り交じり、かなしい、だけどときおり声をおさえてわらってしまう。
たとえるなら、オラは死んじまっただア~♪のザ・フォーククルセイダーズが「悲しくてやりきれない」をメドレーするようなというか。
で、読み終えてからもしばらく、あれこれ自分の身にかさね考えてしまう。文庫サイズの150頁の軽い本にもかかわらず、胸にくる随想ノンフィクションでした。


前田さんはこの本ではじめて知る著者で、世の中にはまだまだすごい書き手がいるのだと驚きました。
シンミリさせる、泣かせるだけの本や書き手ならいくらでもいるけれど、沈痛であり滑稽というのはきわめて稀有です。
その本がこの度、中央公論新社から増補刊行されると知り、いてもたってもおられず前田さんに刊行記念インタビューをお願いしました。
先の私家版(前田さんは「同人誌」と表記)作成の経緯を、新しい本書の「あとがき」で知りました。
とても意外だったのが脱稿から製本販売までたった3日間だったということ。もともと誘われて文学フリマに出すためのものだったそうですが、むちゃな綱渡りにしては完成度の高いシンプルイズベストな装丁とともに内容的にも熟慮の痕跡がうかがえもする。
今回、新しい装丁本(元本のよさを活かした挿画とB6変形サイズ)を手にして、あの真っ白でシンプルな造本は大手の版元が作成する見本に類似していると初めて気づきました。「見本」に感じさせなかったのは作者の本気さゆえなのかとも。
中央公論新社版は、私家版に大幅な増補加筆がなされていますが、残念だなあというか、私家版を買っておいてよかったおもったことがひとつ。
前田さんがまだ福岡にいてライターを名乗るものの「四捨五入で無職」だった頃、片山恭一さんにインタビューした(当時ベストセラー作家にしてメディアの露出が限られていた片山さんにどのようにして会い、話を聞くことができたのか。出版界の実情がわかるとともに、片山恭一さんに対する見方が原稿を読む前と後では変わる)が、前田隆弘という書き手をよく物語りもしています。
テーマの統一性という事情は推察できるものの、残してほしかったなあ、もったいないないなあ。と、ともに私家版読者はお得だとも。


ところでインタビューに際し、前田さんの前著『何歳まで生きますか?』(PARCO出版)を読んでいます。タイトル通り、何人もに死生観をきいていくインタビュー集です。
中でもノンフィクション作家の石井光太さんの回は同じくインタビューを仕事する身として、ハラハラドキドキしながら頁を繰りました。
初対面にして、ワンテーマで押しきる企画。当初訊けどもそっけないこたえの連続に早々に撤収したくなってもおかしくない。インタビュアーとして窮地におもえましたが、喪失体験を問うていく中でふいに「どなたが死んだときですか?」と逆質問を受ける。空気が変わりはじめる瞬間。
聞きだす、から、対話へ。
4打席三振の末の9回裏ツーアウト逆転サヨナラ3ラン。ぞくっとするやりとりが刻まれています。
収録されている11人の中には、雨宮まみさんもおられます。新刊本『死なれちゃったあとで』では雨宮さんのことを書いた一章があらたに書き加えられています。長文にして名文です。火葬場で棺に収まる雨宮さんを足下のところから眺める見ようによってはフキンシンな描写に、書き手の誠実さとやりきれなさが伝わってきます。
しかも、その後に起きた湿っぽさを破壊するアクシデントをギリギリの滑稽味でまとめている。筆巧者。場面を想起させる筆致はライターというより作家です。
雨宮さんの章を書くにあたっては最後まで迷い、書きながら考え、書いたという。だからなのか話はあっちにいったり戻ったりする。不勉強にしてわたし自身は彼女のことはほとんど知らなかったのだけど、紹介されるオトコギを感じさせるエピソードから読み終わる頃には親しみをおぼえました。『40歳がくる!』『東京を生きる』も読んでみます。


あと、もしも本屋さんで見かけ買おうかどうしよう?とお迷いになることがあれば「種子島」の章をぜひ捲ってみてください。大学の後輩の実家を20年ぶりに再訪する。わざわざ出かけて行ったにもかかわらずのドタバタ大チョンボな出だし(落語の枕のよう)で笑いをとりながら、ようやくご家族に会う。20年を経ての朗らかなお父さんとのやりとりは深い。なんとも深いです。


2012年に出た前作『何歳まで生きますか?』があって、最新作につながるのだなあと思いました。インタビュー田原町の当日は『死なれちゃったあとで』をベースに、前作にもふれながら前田さんに「インタビューという仕事」「ひととの記憶を書くということ」について聞けたらと考えています。
前田さんは、さめた眼と湿った抒情の書き手だと作品から推察しているのだけれど、どうだろう?
※会場参加のみ(配信なし)ですが、客席からの質疑応答の時間を設けますので、ぜひご参加ください。

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 概 要

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日 時:2024年4月27日(土)18:30開場/19:00開演

会 場:Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京メトロ銀座線「田原町」徒歩2分)

参加費:1,500円(会場のみ)

ご参加をご希望の方は【インタビュー田原町09】ゲストは、『死なれちゃったあとで』(中央公論新社)を書かれた、ライターの前田隆弘さんです。 | Peatixよりお願いします。
※オンライン配信はありません。

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 登壇者プロフィール

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話し手=前田隆弘さん

まえだ・たかひろ/1974年福岡市生まれ。フリーランスの編集者・ライターとして、インタビューを中心に活動。雑誌「TV Bros.」にてフジテレビ「久保みねヒャダ こじらせナイト」の連載版、岡村靖幸、岩井秀人などの担当を長年つとめる。著書に『何歳までいきますか?』。愛称「まえさん」。

聞き手=朝山実

あさやま・じつ/1956年兵庫県生まれ。転職を経てフリーのライター、編集者。著書『アフター・ザ・レッド 』『父の戒名をつけてみました』ほか。編集本に『きみが死んだあとで』(代島治彦著)、『「私のはなし 部落のはなし」の話』(満若勇咲著)など。
__________________________________ 配信について

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オンライン配信は、ZOOMを利用しておこないます。
Zoomアプリをインストールしインターネットに接続したPC、スマホ、タブレットなどをご用意ください。
当日、開演前にPeatixのDMおよび、お申し込みの際にご入力いただいたメールアドレスへミーティングルームへの招待URL、パスワードなどをお送りしますので、そちらからご参加ください。

なお、機材トラブル等で開始時間が遅れることがございます。また配信が不可能な状態になった場合は、終了後に録画を共有する形で対応させていただきます。あらかじめご了承のうえお申し込みください。

2024.03.30. | Posted in news