2023年07月09日

【終了しました】【インタビュー田原町02】『ジュリーがいた 沢田研二、56年の光芒』 島﨑今日子さんをお招きして

ジュリーがいた 沢田研二、56年の光芒』(文藝春秋)の出版を記念し、
著者の島﨑今日子さんをお招きし、この本を書かれるまでをうかがう会を催します。

380頁をこえる(小さな文字でぎっしり)本書を読みと終えるのに今回、数日を要しました。
明かされる逸話の断片にふと、私的な記憶を手繰ってみたりしていたからです。
たとえば、バックバンドのオーデションに受かったベースマンが、井上堯之から沢田研二と仕事をするにあたり、このような心構えを教えられたという。
「今ここに封筒が百枚あって、『沢田、明日まで住所と名前を書いて、切手貼っておいて』と言われると、あいつは『なんで?』とか言わないで、『はい』と言って、それを一生懸命百%、百二十%こなす、沢田はそういうやつなんだ。自分の仕事を確実に成し遂げるというプロ意識の持ち主で、本当に真面目で謙虚なやつなんだよ」(「第7章 レゾンデートルの行方」より)
その後、新メンバーとなった彼は、その言葉を痛感させられる場面に立ち会うのですが。
ひとが何を覚えているのか。スターらしくはない、小さなエピソードを「余談」として取材者に語る。それを原稿に記す。そうしたキャッチボールが本書では随所に見られます。

この本は「ジュリー=沢田研二」の評伝であるとともに、1960年代から今日まで、半世紀以上の「時代」のうねりを俯瞰、ときに接写で迫った記録です。
よくある芸能人ものと大きく異なるのは、二つ。
ひとつは、ときに生涯のライバルと意識しあったショーケン=萩原健一を語るパートに多くの紙幅を割いていること。まるでショーケンの評伝なの?とタイトルを見返すほどに。芸能界入りのきっかけとなる内田裕也や、歴代マネージャーをはじめ「スター」のブレーンとなってきた人たち、熱烈なファンらを訪ね歩き(氏名表記のあるものだけでも69人)、さながら群像時代劇を読むよう。ひとりひとり、語る場面が見えくるのです。

もうひとつは、空手や野球に没頭していた少年時代から「タイガース」、ショーケンとのツインボーカルバンドの「PYG」、ソロ歌手、久世光彦のドラマに出演など、その時代時代のジュリーを描きながら時代「情況」を詳しく活写しているところです。
デキゴトの羅列ではない。たとえば71年1月24日、タイガース解散コンサートが武道館で催されていた「その日」、奇しくもすぐそばの九段会館で催されていたある集会のことを探索せずにいられない。書き手の広角アングル、「ジュリーのいた時代」のカオスをまるごと描きこまんとする貪欲さがうかがえる一幕です。

さらにもうひとつ付け加えたいのは、「語り手」に物故者が少なくないこと。ジュリーを支えながらメモの類を残さなかった「父」について息子が語る場面からは、影に徹したこの人物への興味が増します。ほかにも10余年前の別の取材で聞いた話が組み込まれるなど、抑制的で本文で自分語りをすることのない、丁寧な取材を重ねてきた著者の半生伝として読めてしまう。

当日は、これまで執筆対象を「女性」に絞り人物記を書きつづけてきた著者が、唯一「男性」に挑んだのがジュリー。ネタバラシになりますが、膨大な資料をもとに綿密かつ縦横に糸を紡ぎながらも、本書はスター本人の「語り」を欠いている。しかし。結果、これが本書の僥倖となっています。対象と適切な距離をとり続けるのは取材者の難関です。会わない、会えないことが著者を長征に奔らせ、称賛一辺倒に偏らない重厚な人物伝を構築させています。「週刊文春」での企画着手からでも4年。紆余曲折。歳月をかけてでも「書こう」と決めた、その舞台裏を聞いてみたいと考えています。



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 概 要

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日 時:2023年8月6日(日)18:30開場/19:00開演
    当日、開演直前にzoomのURLをメールまたはPeatix DMにてお送りいたします。
    1週間のアーカイブ配信あり。開催日の翌日以降、準備でき次第メールにてアーカイブ視聴URLをお送りします。

会 場:Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京メトロ銀座線「田原町」徒歩2分)

参加費:1,000円(会場、オンラインとも)

ご参加をご希望の方はhttps://readinwritin2308062.peatix.com/viewよりお願いします。

※会場で開催し、オンラインでの同時配信を予定しています。ただし、状況により登壇者の移動に困難が生じた場合などは、延期、オンラインのみでの開催となる可能性もございます。あらかじめご了承ください。

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 登壇者プロフィール

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話す人

島﨑今日子(しまざき・きょうこ)

1954年、京都市生まれ。ノンフィクションライター。
著書に、『森瑤子の帽子』『安井かずみがいた時代』『この国で女であるということ』『だからここにいる』などがある。

聞き手

朝山実(あさやま・じつ)

1956年兵庫県生まれ。書店員などを経て1991年からフリーランスのライター&編集者。
人物ルポを中心に今年5月に休刊した「週刊朝日」で30年間「週刊図書館」の著者インタビューに携わってきた。
著書に『父の戒名をつけてみました』『お弔いの現場人 ルポ葬儀とその周辺を見にいく』(中央公論新社)、『アフター・ザ・レッド 連合赤軍兵士たちの40年』(角川書店)、『イッセー尾形の人生コーチング』(日経BP)など。
編集本に『「私のはなし 部落のはなし」の話』(満若勇咲著・中央公論新社)、『きみが死んだあとで』(代島治彦著・晶文社)などがある。

__________________________________ 配信について

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オンライン配信は、ZOOMを利用しておこないます。
Zoomアプリをインストールしインターネットに接続したPC、スマホ、タブレットなどをご用意ください。
当日、開演前にPeatixのDMおよび、お申し込みの際にご入力いただいたメールアドレスへミーティングルームへの招待URL、パスワードなどをお送りしますので、そちらからご参加ください。

なお、機材トラブル等で開始時間が遅れることがございます。また配信が不可能な状態になった場合は、終了後に録画を共有する形で対応させていただきます。あらかじめご了承のうえお申し込みください。

2023.07.09. | Posted in news